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November 19, 2004

福岡 第10回期日 専門家証人の証言を傍聴して

 17日、福岡地裁で薬害肝炎訴訟の肝炎専門家証人(被告側)の尋問があり、自身も息子もウイルス肝炎患者である身として非常に興味があったので傍聴しました。
 証人は、長崎の国立病院で肝臓病の診療の第一線で働いてこられた矢野医師。証人はご自身の経歴の確認の中で、今年の3月末まで肝臓病の臨床に携わってきたと述べられていました。

 同日行われた清水証人(新薬承認作業の審議会関わった専門家)の証言についても、機会があれば感じたことを報告したいと想います。
 古賀弁護士さんのブログで詳しく紹介されています。

 被告側代理人の主尋問に対する証言を聞いていて、矢野証人が証言した内容は、
 ①フィブリノゲンが使われ始めた昭和39年頃は、輸血後などの血清肝炎の概念はあったが、その大多数は軽症でやがて治癒するものと認識されていた。
 ②慢性肝炎の診断基準が成文化されたのは、昭和42年の犬山シンポジウム、その当時、非活動性肝炎は肝硬変へ進行しにくいと理解されていた。
 ③自身が行った研究=輸血後の非A非B肝炎患者を5年以上(程度)追跡した10例についても、慢性持続性肝炎の所見だった。
 ④最近の研究では、慢性肝炎での線維化進展スピードは1年間に0.1単位。個別の症例に当てはめることはできないが、ウイルス排除されれば年に0.28単位の速度で改善できる。
 ⑤開発されたインターフェロンとリバビリンの併用療法で、難治例と言われた1bタイプ高ウイルス量の症例でも50%程度の症例を治癒に導くことができる。
 ⑥自身が論文で発表したが、輸血後肝炎の場合で、18歳で感染しても、40歳で感染しても、肝がんの高発年齢は平均67歳頃である。
 ⑦原告側が証拠としている日本肝臓学会の「回答書」で、40年前から血清肝炎が、20年前から非A非B型肝炎の予後が悪いとされているが、これは臨床家全体のコンセンサスは得られていない。

と証言されていました。
 これらの証言を聞いていて、想ったことは、
 1)日本の肝臓病研究者のリーダーの一人として、C型肝炎の実態や患者の実情を反映した証言ではなく、研究の成果を率先して臨床家に伝える姿勢のない証言。
 2)日本肝臓学会が、がん撲滅運動を提唱し、そのなかで2015年までは肝がん患者が増加すること。
 講演会などで肝臓専門医が、肝がんや肝不全で死亡する患者が年間4万5千人にのぼり、10年後には6万人に達する可能性があることを指摘されています。
 非A非B型肝炎の患者の困難な療養生活を強いられ、経過の悪い病気の実態から目を背けた証言であること。
 3)インターフェロン治療の効果の成績を過大にみているのではないか。1964年からフィブリノゲンが使われている実態をみれば、1960年代から1980年(裁判に参加するための資料収集が非常に困難な時期)の感染者は、すでに肝がん高発年齢に到達していることは容易に想像できます。
 これらの方々は、証人が証言しているような病気の進展度から計算しても、すでに線維化が相当進み、すでに肝硬変に進展しています。肝硬変患者には、インターフェロン治療は保健診療上不可能で病気の経過は非常に悪いと想われます。
 4)新しく開発されたインターフェロン療法の治癒率が50%程度と証言されていますが、フィブリノゲンによるC型肝炎患者の年齢(その多くは60歳前後以上と考えられる)での、治癒率はわかっていないではないか。
 示された治癒率は、国内での治験データに基づくものと思われますが、治験では20歳代から65歳くらいまでの年代の被検者からまとめられたデータで、高齢者の治癒率はこれまでの他のインターフェロン治療の治癒率データからみても、証言されたデータよりも小さな値になることが予想されます。
 5)なによりも、インターフェロン製剤による治療が、薬剤による副作用の補償規定からはずされていることです。
 重篤な副作用が出る場合もあることが既定の事実となっている血液製剤や抗ガン剤と同じようなインターフェロン製剤による治療を証言によって奨めるのなら、国はインターフェロン治療に対する副作用に対する補償規定に入れるべきではないか。
 6)なによりも、C型肝炎の治療費負担が高すぎます。高齢者で収入がない(劣悪な年金)では、インターフェロン治療や定期的に検査を受ける医療費負担に耐えることがまずできません。

 このあたりのことを、国立病院で働き、現在、県の病院管理監、病院事業管理者としての立場で証言されていること考えると、患者のことではなく、行政の方を向いて仕事をされていることがはっきりさせた裁判でもありました。

 
 

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